伊勢志摩百物語~名木・奇樹を訪ねる~
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- 14 - 伊勢市御み薗その町ちょう新しん開がいに、春になると綺麗な梅を見ることができる場所があります。その梅は臥が竜りゅう梅ばいと呼ばれ、枝が横に広がり、幹が地を這いそこから根を生じ、横に伏している竜のように見えることから名づけられました。臥竜梅の花は八重、花茎一つにめしべを多数もち、実を多く結ぶという珍しいもので、人が車座になって議論している姿に似ているところから「座論梅」、また「八房の梅」とも呼称されています。 梅といえば、とある和歌とともにこよなく梅を愛したことで知られ、平安時代の政治家・文人であった菅原道真が挙げられます。醍だい醐ご天皇の御世に右大臣も昇った道真と、伊勢市の梅には驚くべき関係があります。 その関係は平安時代まで遡ります。延喜一年(901)、道真公は、藤原時平の陰謀により九州の大宰府に左遷されてしまいます。その後、そばに仕えていた今いま村むら刑ぎょう部ぶ師もろ親ちかに身に負う冤罪を雪すすぐことすらできないと、崇敬していた伊勢神宮に代参して菅原道真が愛していた梅が、強い願いとともに伊勢にやってきました。龍を想起させた力強い梅は深く信仰されています。7.道真公由来の臥竜梅 (伊勢市御薗町新開)紅白の梅が咲き匂う

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