伊勢志摩百物語~名木・奇樹を訪ねる~
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- 6 - 姿かたちの美しさ、一年中緑の葉をつける常緑性から、松は古来、長寿、繁栄、慶事、節操を表すものとして日本人に尊ばれてきました。庭木にも植栽されて、名物となった松も少なくありません。伊勢神宮の神官ゆかりの守武松、藤波松が伊勢にかつてありました。 名物松は土地の呼び名にもなりました。それが、伊勢市神久一丁目にある寝起松です。地元ではこのあたりを寝起松と呼びます。倭町の二見街道入口交差点から県道102号線(通称・二見街道)を二見方面へ向かい、JR参宮線の高架をくぐるとすぐ左手の細い道に入り、見える一本の松が寝起松です。すっくと立つ松の前には鳥居が立ち、祠があります。 寝起松は、江戸時代末期の『勢ぜい陽よう五ご鈴れい遺い響きょう』や明治28年の『神都名勝誌』には、河邊大宮司精長朝臣の旧宅址と記されています。『勢陽五鈴遺響』によれば、河崎から常明寺に至る田圃の中に明和年間(1764~72)の中ほどですでに神宮の禰宜宅にあった名物松。地域の呼び名に、子どもの守り神に松のもつ力にあやかります。3.寝起松 (伊勢市神久)祠に供えられた鏡餅

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