伊勢志摩百物語~知られざる小さな滝を訪ねて~
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- 19 -卍38天理教宮阪分教会国束寺山西商会自動車整備工場中森製茶滝藪神社御滝滝藪神社れています。国束寺は南勢の霊場として興隆しましたが、明治の廃仏毀釈や戦後の農地改革により衰微し、本尊は大阪四天王寺に、一部は平生に移され、今に名跡が伝えられています。弁天社の遷座もそうした事情と関係するかもしれません。 国束寺開基の神勅の詳細が記されている『神しん鏡きょう広こう博はく記き』巻8には「南に在る閼あ伽か井、弁財天女の福水なり」とあり、水神様として祀られていたようです。国束寺伝によれば、ある昔、弘法大師が国束寺を参詣し、弁財天堂を勧請したとのことです。国束山麓にはその由縁でしょうか、弘法石が玉城町側の登山口にあります。この巨石には、表面に梵字や「南無□□□」、「貞享五年戊辰三月」、「□海敬白」などと刻銘されており、弘法大師への崇敬の念に厚い村人が建立したと云い伝えられています。平成4年3月の災害復旧工事で、弘法石の発見と同時に温泉も湧出したといわれ、稀有なことだと思いました。 国束寺には嘉永4年(1851)春に、田丸藩家老・金かな森もり得とく水すいが歌友とともに清遊しています。「遠をち近こちの人も国束の山桜みのりの花のおくをたづねて」と詠んだ歌碑が、国束山麓の山道に建てられていましたが、現在は田丸城の旧三ノ丸奥書院庭園に移されています。国束山は桜の名所でもあり、夏には蝉の声、秋には紅葉、といった風物が心をよせつけます。桜に滝。登山に温泉。清々しさを味わってみてはいかがでしょうか。(臼杵 浩秀 USUKI Hirohide)■アクセス三重交通バス「大久保(伊勢)」停留所から北西の農道に入る。徒歩およそ10分。■周辺の見どころ◉国束寺…朝熊の金こん剛ごう證しょう寺じと並び称された南勢の名刹。国束山に礎石が残り、山頂には素盞嗚尊の胞え衣なが納められていると云う夜や奈な塚がある。◉弘法石…「空海敬白」と刻された巨石。近くには玉城弘法温泉があり、登山の疲れをとることができる。御滝さん滝藪神社と御滝さん国束寺弘法石

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