伊勢志摩百物語~渚・港を歩き憩う~
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- 12 - 鳥羽市の東端に、絶景の海岸線を見ることのできる場所があります。そこは、鎧崎と呼ばれていて、荘厳な岩礁と荒々しい荒波が見せる力強くも美しいその景色は圧巻で、「鳥羽十景」にも選ばれています。鎧崎は暗礁が多く、ごく波の静かな日であっても小山のような波がうねります。そうして白波が岩を削る難所の様子は、「伊勢の神こう崎ざき、国く崎ざきの鎧、波切大王なけりゃよい」とうたわれて昔から船頭たちに恐れられてきました。岬の突端には白亜の灯台があり、航行の安全を見守っています。 地名の「国崎」とは、志摩の国で最も東にある岬からきているものとされており、似た例として、大分県国くに東さき半島の「国くに崎さき」という地名にもみられます。鎧崎の地名について『角川日本地名大辞典』は、倭姫命が御巡じゅん幸こうの際にこの場所で鎧をはずされたという伝説があると記しています。その時に、この地が海の幸に恵まれた豊かな国であったことから、天照大御神の御み贄にえ処しょに、国崎の海女を「湯ゆ貴きの潜かづきめ女」と志摩の東端、幸の岬。神宮と海女の関わりを今に伝えます。6.鎧よろい崎さき (鳥羽市国崎町)荒々しい岩礁と青い海

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