- 21 -付き従った人々の様子を思い浮かべて詠んだ歌が『万葉集』に収められています。 「あごのうらに ふなのりすらむ をとめらが あかものすそに しほみつらむか」(巻15・3610番) 現代語訳すると、「あごの浦で船乗り遊びしている女性たちの赤裳裾に今頃潮が満ちているだろうか」となります。おそらく柿本人麻呂はこの歌で行幸の無事を祈ったのでしょう。日本には古くから言霊信仰というものがあります。時には言葉が現実さえも変えてしまうほどの力をも持っていると考えられていました。女性たちが楽しく遊ぶ様子を歌として詠むことで、現実でも素晴らしい行幸であるように願ったのでしょう。それはともかく、和歌に詠まれるほど国府白浜は美しい浜であることで有名だったに違いありません。この和歌が刻まれた石碑が「阿児の松原」にありますので是非見てみてください。 この文章を書くうえで私は実際に現地に行って調査をしました。海風が強く吹いていましたが、それが逆にサーフィンに適した波を作り出すのだと分かりました。白浜で目を閉じると波のさざめき、風の吹く音、松の揺れる音など様々な音が聞こえてきますが、不思議と心が落ち着く感じがします。それは、古代から醸成されてきたこの土地、この白浜の雰囲気なのだと思います。あなたもこの雰囲気を味わってみませんか。 (岩田 信太郎)■アクセス近鉄志摩線「鵜方駅」から「安乗」行きバスで13分。■周辺の見どころ◉志摩国分寺…奈良時代、聖武天皇の勅により、一国一寺の詔に基づいて建立された。◉国府神社…海岸の砂と同様の砂質である境内。祭神は天忍穂耳命以下、五男三女神。柿本人麻呂の歌碑国府神社の例大祭で奉納される獅子頭神事志摩国分寺跡阿児の松原海水浴場志摩国分寺卍51461514国府神社国府白浜
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