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第二回皇學館大學人文學會大会の開催


 昨年度の第一回(四十周年記念)大会に引き続き、第二回大会を平成二十一年七月五日(日)皇學館大学伊勢学舎(四三一教室)において開催した。

午後一時より会長の清水潔文学部長による開会の辞の後、前半の報告は深津睦夫教授(国文学科)を座長として浦野綾子氏(本学大学院博士後期課程国文学専攻)による「『平家物語』音楽説話と「数奇」」、別當直子氏(同)「『義経記』における義経像 ―「幼さ」をめぐって―」の二つの報告をいただいた。浦野報告は、『平家物語』に登場する以仁王の愛笛「小枝」について、従来言及されてこなかった「音楽への執着」と中世初頭に認識されていた「数奇」の概念との共通性について考察した。また、別當報告は、『義経記』に書かれた義経の行動を分析することによって、「英雄としての素質」と「後先考えず自分勝手に振舞う幼さ」が見られ、平氏打倒後は「貴公子としての悲哀」と「人に頼り自分では何もできない幼さ」が見られることを指摘し、『義経記』における新たな源義経像を導き出した。


開会の辞(清水潔会長)

 後半は岡野友彦教授(国史学科)に座長交代の後、豊田毅氏(同前期課程国史学専攻)「幕末維新期における農兵利用 ―長州藩の海防政策を中心に」と大平和典氏(本学館史編纂室助教)「皇學館大學の国立移管論について」の報告を得た。豊田報告は、幕末長州藩の農兵論を中心とし、当時の全国的な武士以外の身分を兵力化する流れとその発生について考察され、幕末期の海防政策から明治維新後の徴兵制度まで関連することにも言及された。大平報告では、皇學館大学再興時に、旧神宮皇學館と同様の国立大学としての再建を目指す動きが一部に見られるが、結果的にはその運動を始めるには至らなかったことが報告され、国立大学として再建する論、あるいは再興後国立に移管すべきとする論について、その発生時期や背景を検討された。

 以上の研究報告には学内外から七十三名の参加者があり、それぞれの報告の後の質疑応答も大変活発に行われ、盛況な様子であった。
 研究報告の後、休憩を挟み午後三時三十分より総会を開催した。最初に上野秀治教授(国史学科)を議長に選出し、@平成二十年度決算について、A平成二十一年度予算について、B人文学会今後の会計状況について、の三案に付いて審議が行われた。二十年度決算については、監査委員の中村哲夫教授(教育学科)より監査の結果適正に処理されているとの報告がされた。また、来年度予算及び今後の会計状況については、いずれも担当委員より説明され、特に異議なく原案通り了承された。

 午後四時から宮川泰夫先生(本学特別招聘教授)より「地球化の意味と局地化の意義 ―甦る日本・相生の文明―」と題した記念講演をいただいた。日本独自の文化の発展の背景にあった「相生」(あいおい)という考えが、他の優れたものや相反する関係のものをも取り込み、自分のものとする風土を育て、日本の技術を作り出したことに注目し、日本の伝統的文化の重要性と再活性化、自然摂理と適応した文明の発展の重要性を認識する必要性を説かれた。研究報告より多くの八十三名の受講者は、現在の社会経済の実態に基づく日本の文化に対する認識やその意義について深く感銘を受けた。


講演中の宮川先生

 閉会の後、午後五時三十分より懇親会(倉陵会館喫茶室)を出席者二十六名で開催した。学長の伴五十嗣郎教授の音頭による乾杯の後、研究発表や記念講演の話題によって大変盛り上がり、予定時間を超過し散会した。

昨年度に引き続き、今回も盛況の内に有意義な大会が終了したことは、委員の一人として大変ありがたく次年度大会での更なる発展と盛会を願い、より多くの会員の参加を期待して大会報告とする。
(石川達也 記)

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