午後一時より会長の清水潔文学部長による開会の辞の後、前半の報告は深津睦夫教授(国文学科)を座長として浦野綾子氏(本学大学院博士後期課程国文学専攻)による「『平家物語』音楽説話と「数奇」」、別當直子氏(同)「『義経記』における義経像 ―「幼さ」をめぐって―」の二つの報告をいただいた。浦野報告は、『平家物語』に登場する以仁王の愛笛「小枝」について、従来言及されてこなかった「音楽への執着」と中世初頭に認識されていた「数奇」の概念との共通性について考察した。また、別當報告は、『義経記』に書かれた義経の行動を分析することによって、「英雄としての素質」と「後先考えず自分勝手に振舞う幼さ」が見られ、平氏打倒後は「貴公子としての悲哀」と「人に頼り自分では何もできない幼さ」が見られることを指摘し、『義経記』における新たな源義経像を導き出した。
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