教育現場の「今」を体感しながら、
実践力を身に付けています。

先生が担当されている数学ゼミについて教えてください。

ゼミでは、算数や数学の魅力を体感できる活動を展開しています。具体的には、皇學館大学での研究集会や三重県算数・数学教育研究会への参加、MieMu(三重県総合博物館)など教育機関とのイベント企画、中学校や高校での出前講座などです。ゼミ生は、これを機に教育現場の今を知り、これからの学びのヒントを見つけています。また、教育現場で生かせる教材開発や指導方法についても研究しています。

地域との連携も特色の一つなのですね。

そうですね。三重大学や近隣の市町村と連携することで、現在の三重県の算数・数学教育の現状を知り、ネットワークを広げることも可能になります。

出前講座について具体的な活動内容をお聞かせください。

出前講座では、学生たちが中学や高校へ出向き、実際に授業を行います。これまでに、「トイレットペーパーと数学」(津市立橋北中学校、皇學館中学校)、「数学研究」(皇學館中学校)、「数学Ⅲの発展的内容としての微分方程式」(皇學館高等学校)、「数学A 整数の性質」(伊勢学園高等学校)、「教育について考える」(岐阜県立恵那高等学校)などの出前講座を実施してきました。

トイレットペーパーを教材に使うなど、とてもユニークですね。

出前講座では、中高生が数学を身近に感じられるよう、教材や授業方法を工夫しています。例えば、「トイレットペーパーと数学」という講座では、子どもたちの関心をひくためにトイレットペーパーという身近なものを教材に使い、トイレットペーパーの回転数(何回巻いてあるか)を計算して求める授業を行いました。計算のしかたを順にまとめたプリントを配付し、実際にトイレットペーパーを使って実測してみるなど、一緒に体験しながら考える授業を心がけました。出前講座に参加したゼミ生は、「子どもたちと交流したことで、課題が見つかりました」「何度もリハーサルをし、教材づくりを行うことで事前準備の大切さを学ぶことができました」と語るなど、今後の学びにつながる貴重な経験になっています。

数学教員をめざす学生にとって、ゼミでの活動は貴重な経験になっているのですね。

あるゼミ生は、子どもたちから「数学は生活の役に立たないよね」という声を聞き、とても残念に思っていたそうです。そこで、ゼミでは「大好きな数学のおもしろさを少しでも伝えたい」と、指導法や教材の研究に取り組んでいます。解答は一つでも、解き方が何通りもあるのも数学の魅力です。子どもたちにさまざまな解き方を教えることで、学生自身も数学の楽しさや奥深さに出会えることを期待しています。

ゼミで学ぶおもしろさや魅力とは?

高校まではどちらかというと、インプットの学習が多かったと思います。しかし、社会に出るとそういう姿勢では何も進んでいきません。自らアウトプットする力が必要とされてきます。大学のゼミでは、自主的・主体的に学ぶことで、アウトプットする経験を積み重ねていくことができます。また、一つの正解にたどりつくだけでなく、ゼミ活動や研究を通して「0から1」をつくるという経験ができます。今まで分からなかったこと、なかったものから新しい何かをクリエイティブすることができます。

「0から1」をつくるという経験は、すばらしいですね。

仲間と共に、自分が「これだ!」と決めたものに没頭し、新しい何かを生み出してもらいたいと思います。その経験は社会に出たときに必ず生きてくるに違いありません。

ゼミで培ったクリエイティブな経験は、
将来、必ず役立つ力に。

ゼミでの学びを通して学生に身に付けてほしい力は?

「何かを生み出す力」です。そのための第一歩として、ゼミ活動を通じてアウトプットする力を身に付けてほしいと思います。自分自身が興味関心のあること、疑問に感じたこと、解明していきたいことに対して、主体的に取り組んでください。
また、目標に向かって努力する中で、思いもよらない副産物に出合うこともあります。主体的に行動している過程において意味のない経験は絶対にありません。自分が一歩踏み出すことにより、それまで見えていた世界が変わってくるはずです。こうした体験を通して、自分自身のレベルを上げていってもらいたいと思います。

実際にゼミ生も「0から1」をつくるという経験をしているのですか?

令和4年度には、ゼミ生の水谷一心さんが、任意の年で設定した日付の曜日を求める数式を発見しました。「カレンダーの数学」というテーマで日本科学教育学会にて発表し、それを「学術論文」という形でまとめ、いずれは学会誌に投稿する予定です。こうして「0から1」をつくるクリエイティブな経験は、社会に出た時に必ず役立つ力になるはずです。

指導するうえで大切にされていることは?

学生が持っている力を「引き出す」ということです。教育の語源は、ラテン語の「ducere」です。「外へ導く」という意味から「教育(education)」という言葉が生まれたと言われています。一人ひとり、みんな違っているように、指導方法もみんな異なります。ですから、今までうまくいっていたことがうまくいかないということも少なくありません。特に、これからの時代はもっと多様化していくと思います。そのときに、過去のうまくいったことにとらわれるのではなく、常に「今」大事なことは何かを考え、そして先を見据えた指導をしていきたいと思っています。

最後に、受験生へメッセージをお願いします。

ゼミで得た知識や経験をアウトプットすることで、数学の意義を感じてください。算数や数学の魅力を体感できるのが、ゼミの目標です。自分自身の算数観・数学観を豊かにし、それを周りの人に伝える経験を通して、数学の意義を感じてもらえればと思います。ぜひ共に学び、成長していきましょう。

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数学のおもしろさ・奥深さを知り、伝えることができる数学教員を養成します。

「数学科教員になりたい」「子どもたちに数学のおもしろさを伝えたい」「数学をもっと深く学びたい」こうした要望に応えるのが、教育学科の「数理教育コース(中高教員)」です。カリキュラムには、教員に必要な教科教育法や指導法、実践力を身に付ける科目をはじめ、数学の基礎から高い専門性まで幅広く学べる科目を用意。数学の学びを通して自分自身の知見を広げながら、子どもたちに数学の魅力を伝え、豊かな学びを創造する力を育みます。