研究書の入手


新刊書店

 新刊書は、街の新刊書店で購入するのが一般的であるが、研究書やしばらく前に刊行された本は、店頭に置いてないのが普通である。流通している本すべてを店頭に置くことはできないからである。また、日本の書籍の大部分は、委託販売制度という制度により流通しており、発行後、しばらくすると、新刊書は店頭から無くなることが多い。委託販売制度というのは、発行後一定期間以内ならば出版社に返品が可能という制度である。書店は、売れると予測される本を主として店頭に並べ、売れ残れば返品することになる。

 したがって、多くの場合、必要な本は注文しなければならない。この、注文による本の入手は、意外に時間がかかるものである。2〜3週間かかるのが平均的なところであろうか。

 専門書に関しては、専門書店に電話注文する方法もある。宅配便の代金は別途必要であるが、注文の翌日に入手できる。
専門書店というのは、神田の古書店街などの、国文学専門古書店のことである。国文学関係の専門書は、刊行当初からこれら国文学専門の古書店に並ぶ。古書店ではあるが、それら新刊書は新品である。しばしばそれらは定価の5分引きくらいの値段となっている。

 「電脳式」の名にふさわしいのはオンライン書店の利用である。以前は、書籍代は定価で、それ以外に送料が必要だったから、一般書店と比べて、高くついていた。メリットはほとんどなかったのである。
 ところが、近年は、一定金額以上買うと、送料が無料になるのが一般的となってきた。
 また、購入金額に応じてポイントが与えられるというようなサービスをしているオンライン書店もある。
 以前は、オンライン書店の強みと言えば、本を探しやすいことと、自宅から簡単に注文できることであったが、今は、一般書店(リアル書店)に劣るのは、本の実物を手にとって見られないことくらいになってしまった。
 リアル書店はたいへんだ。

 さて、オンライン書店もたくさんあるが、私が比較的よく利用するのは次のもの(平成17年3月時点)。インターネットの世界は変化が激しいから、新しい巨大書店が何時出来るかわからない。サーチエンジンなどで時々チェックしよう。


古書店

 国文学関係の専門書の多くは、新刊書として入手することはむずかしい。そもそも発行部数が五百部程度にすぎないし、増刷・再刊されることはほとんどない。
 したがって、古書で入手することが多くなる。古書となると、本来の定価より高くなることがほとんどである。特に定評のある本の場合、定価の数倍に高騰することもある。

 専門書の場合、ふらりと入った古書店の棚にたまたま並んでいるということは稀である。僥倖を期待してあちらこちらの古書店へ行くよりも、目録で購入する方が確実である。国文学の専門古書店はたいてい古書目録を出しているから、それによって注文する。微妙に値段が異なることもあるから、複数の目録を見比べるとよい。

 古書店についても、「電脳式」の名にふさわしいのはオンライン古書店の利用である。
 古書店はインターネットと相性が良い。古書店が連合してデータベースを作り、インターネット上に展開している例が多い。
 代表的なものとして、次のようなものがある。

  • BOOK TOWN KANDA
  •  世界一の古書店街である神田古書店街ののサイトページ。特に国文学をはじめとする専門書に強い。データベースも使える。
  • 日本の古本屋 
  •  全国3000軒の古書店組織全古書連が作っているサイト。データ量も多いし、いろいろなコーナーも見る価値あり。


図書館

 図書館にはさまざまなタイプのものがある。それぞれをよく知って、効果的に利用しなければならない。

所属大学の図書館

 まず、各自の所属大学の大学図書館を利用するのが基本となる。
図書カードなりオンライン検索なり、それぞれの利用方法をよく理解しておくことが大切。もし必要な図書が見つからない場合は、カウンターで一度尋ねてみるべきである。自分の探し方がまずいことは、よくあることである。
 特に作品を探す場合について、述べておく。しばしば犯すまちがいは、作品名と書名との混同である。
 古典文学の場合、たとえば「熊野の本地」という作品があったとすると、これが書名になっていることはまず考えられない。しかし、そのような作品は確かに存在し、しかも多数の本に様々な形で所収されているのである。このような作品を探す時に、図書カードやオンラインによっていくら検索しても、これを見つけることはできない。では、これを探すためにはどうするか。
 そういう時は、「文献探索の道具」に示した『国文学複製翻刻書目総覧』『続国文学複製翻刻書目総覧』『国文学年鑑』などを使って、その作品が収められている図書を調べ、その書名で検索するのである。
 近代文学作品の場合は、『全集叢書総覧』や現代日本文学総覧シリーズによって、その収められている図書を探す。
 
 

他大学図書館

 他大学の図書館を利用する場合は、まず、その図書館に所蔵されているかどうかを調べなければならない。そんな時に、「電脳式」が活躍する。多くの大学の蔵書がオンラインで検索可能なのである(OPAC)。

 オンライン検索ができる図書館への入り口は、次のサイト。

 また、『学術雑誌総合目録』のオンライン版がある。書籍の所在を加えたもので、必要な書籍や雑誌がどの大学図書館に所蔵されているかを知ることができる。ただし、書籍については網羅的ではない。
 多くの大学図書館の所蔵雑誌・図書を一気に検索できるということでは、各大学別のオンライン検索より効果的である。

 オンライン検索などにより、他大学に必要な図書があることが判明した場合、その大学図書館へ閲覧しに行くこととなる。その時には、自分の所属する大学の紹介状をもらって行かねばならない。卒業論文の指導教員の紹介状ではなく、図書館の紹介状が有効である。
 
 

国立国会図書館

 国立国会図書館は日本最大の図書館で、原則的には、刊行された本のすべてが収蔵されている。したがって、どこを探しても入手できなかった本でも、最終的にはここに行けば、見ることができる。二十歳以上ならば、特に紹介状などなくても、入館できる。
 
 

公立図書館

 公立図書館の長所は、原則的に、誰でも入館して、図書を利用することができる点にある。意外に専門的な図書がある場合もある。レファランスが充実している館も多い。
 
 

専門図書館(国文学関係)

 国文学関係の専門図書館として、国文学研究資料館日本近代文学館がある。

文庫など

 写本や版本などの古典籍を収蔵している施設がある。神宮文庫、宮内庁書陵部、内閣文庫、天理図書館、尊経閣文庫、東洋文庫、蓬左文庫などである。
 これらの施設を利用する場合は、さまざまな条件が付されていることが多い。唯一無二の資料を見せてもらうわけであるから、当然のことである。前もって、当該施設に問い合わせて、その条件をよく確かめておくこと。また、古典籍を扱う技術を修得しておくことも必須。これらについては、指導の先生とよく相談すること。なお、私立の文庫は、あくまでもその文庫の好意で資料を見せてくれるのであるから、その点をよく理解しておかなければならない。


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