テーマ
研究テーマの選択というのは、各自のそれまでの生き方や勉強の仕方を問われる、すぐれて個人的な問題であり、一般論としてどのようなテーマが良いかを述べることはむずかしい。ただし、その選択にあたって、次の点は考慮すべきである。
-
自分に興味があるテーマか。
-
研究意義のあるテーマか。
-
すでに解決済みのテーマではないか。
-
研究のための資料があるか。
-
自分にそのテーマを扱う力があるか。
このうちもっとも重要なのは、「1、自分に興味があるテーマか」ということである。
ともかくそれに取り付いて、いろいろ資料を集めたり、調べたりしているうちに、道が開けてくることが多いものである。
ただし、気をつけなければならないのは、こうした理由でテーマを選択した場合、すでに生半可な知識を持っていることが多いことである。そうした「常識」が邪魔をして、真に重要な問題を見出せないことがしばしばある。何も知らないつもりで、一から調べてゆくことが大切である。
微妙なのが、「3、すでに解決済みのテーマではないか」ということ。
「常識」「当たり前」と思われていることに対して、根本的な疑問を持つことは、重要なことである。そうしたテーマについて新しい見解を打ち出すことこそが、「研究」ということの醍醐味でもある。「素朴な疑問」に基づいてテーマを選ぶことは、初心者の特権でもあるから、「常識」に対して素朴に疑問を持つことは、大事なことである。ただし、そのようなテーマ選択には、少なからず危険が伴うのも事実である。研究史をよく調べることが必要であろう。
論文の作成とは、研究を進めることによりテーマを次々に絞って行く過程であるという言い方もできる。
研究の出発段階でとりあえずテーマを設定する。しかし、それは多くの場合、研究対象の作品・作家・事象などを決定する程度にすぎない。研究を進めてゆくと、その作品・作家・事象に関するさまざまな問題点が明らかになってくる。そこで、そのうちの一つを選び取る。これが、テーマの絞り込みである。さらに、その問題点を調査・研究して、それに対する自分の結論を導き出す。この結論こそが、この研究の真の意味でのテーマである。
このようにテーマは、研究の進展にともなって、その範囲が限定されてゆくが、いずれの段階においても、それは、暫定的なものであると考えておいた方がよい。いったんは確定し得たと思ったテーマも、新たな資料の入手、考察の深まりによって、変更しなければならなくなるのは、よくあることである。
なお、論文の標題は、たいていの場合は、論文の結論を書き終えた後に決めることとなる。標題は、その論文で取り上げたテーマを端的に表現したものであるべきだから、真の意味でのテーマが確定しないと、書くことがむずかしい。
←目次へ
|