パソコン使いこなしの必殺技!! それは、タッチタイピング タッチタイピングとは、10本の指を用いて、キーボードを見ることなくキーを打つ技術である。
国文学研究のためにパソコンを利用しようとする人がまず最初に覚えるべき技が、このタッチタイピングである。 「文科系の学問にあんな高度な技が必要なのか?」という疑問を持つ向きもあろう。 「10本指で早く打つ必要などない。〈1本指雨だれ打ち〉で十分」と主張する人もあろう。 しかし、こうした考えは、おおまちがい。 まず、「文科系の学問」だからこそ、タッチタイピングが必要だと主張したい。文科系の学問は、「言葉」を用いてものごとを考える。また、最終的にはなんらかの形で文章を書くことによって研究成果を発表する。そうした考察・執筆に際して、このタイピングが絶大なる力を発揮するのである。 タッチタイピングが「高度な技」というのも、おおまちがい。 これは、2週間でかならずマスターすることができる単純な技術である。しかも、毎日たった1時間の練習で十分。 たったこれだけの練習で、生涯にわたって役に立つ技術が身につくなどという例は、考えてみれば、そんなにあるものではない。
世の中には、タッチタイピングは大量の文章を高速に入力するために必要な技術だという見方がある。いわゆるタイピストが目にも留まらぬ早業で大量の文章を打ち込んで行くというイメージである。 しかし、これが大いなる誤解。 われわれの文章書きは、手を動かして文字を書いて(キーボードを打って)いる時間よりも、原稿用紙(モニター画面)をボーっとながめて考え事をしている時間の方が圧倒的に長い。事務的な文章を書いている時で1対10くらい、論文ならば1対100くらいの比率で、考えている時間の方が長いと思う。だから、10本指でそんなに早く入力する必要はない、と考えがちである。 しかし、そこが、まちがい。 誰にでも経験のあることだと思うが、長い間考えてようやく思いついたフレーズは、すぐに文字にしないと、するっと逃げていってしまう。書いている最中に、ペン先からそのフレーズが流れ出してどこかへ行ってしまうことも少なくない。ピカッとひらめいたアイディアも、「あっ、そうか」と言った瞬間に消えてしまうことがある。そんな時、後に残るのは、今なにか重要なことを思いついたという感覚だけである。 10本指でさっと文章を入力する技術を覚えるのは、その「あっ、そうか」という瞬間のためである。その時に、大事な思いつきを逃さないで、文章に定着させるために10本指でキーボードを打てるようにしておくことが肝心なのである。 感覚としては、自分がなにか考えたら、考えた瞬間に画面にその文章が現れている、というふうになるのが理想である。 狼のように、長い時間追い続けて獲物を捕らえるためにタッチタイピングはあるのではない。豹のように、長い時間待ち続けて一瞬のうちに獲物を仕留めるために、それはある。
タッチタイピングを覚える方法はいろいろある。 専門のスクールへ通って、インストラクターに就いて覚えるのも一方法。 タイピング習得用のパソコンソフトも何種類も出ているから、それを買って、練習するのも一方法。 しかし、それらは、けっこうお金もかかるし、場合によっては時間の制約もあろう。 一番簡単で、安価なのは、ハウツー本を一冊買って、それで覚える方法である。 これの難点は、スクールへ行く場合やパソコンソフトで練習する場合と比べて、心理的プレッシャー(高い買い物をしたのだからというような)も少ないから、途中で挫折しがちなことである。しかし、是が非でも覚えて、みずからの研究に役立てようという気持ちさえあれば、その点はクリアできよう。 そんなわけで、ハウツー本を買って、それを一冊仕上げることをオススメしたい。 本は、どれでも良いと思う。本屋さんへ行って、適当に選べば、それでたぶん間違いはない。 ←目次へ |