CD-ROM版
CD-ROMで提供されるデジタルテキストは、その作品の専門家とデジタル関係の専門家が協力し、大きな出版社から出ているから、信用が置けるものとなっている。 ただし、商業ベースに乗っているということは、それだけの需要が見込まれる作品だということになる。 おのずとその作品は限られ、しかも、複数の企画が競合することになる。言い換えれば、同じ作品が何種類か出ることになる。
平成12年春現在において流通している作品を、ジャンル別に次に示す。 これは、いわゆる全文テキストに限っており、古典作品の梗概とそれにまつわるさまざまな情報を付加したようなものは省いた(源氏物語や平家物語についてそのようなCD-ROM版がある)。 - 『新編国歌大観 第2版』(角川書店)300,000
*和歌研究者必携。これなくしては、和歌文学研究はむずかしくなってきたとさえ思われる。和歌の用例を網羅的に検索できるのが、なによりもありがたい。 ただし、300,000円という値段はつらい。なかなか個人で買える価格ではない。特に学生では無理だろう。研究室などで使わせてもらうしかないかもしれない。 バージョンアップして、ずいぶん使いやすくなった。ただし、20,000円高くなった。 ハイブリッド版(MacでもWindowsでも使える)なのは、Mac者としてはありがたい。- 『二十一代集(正保版本)』(岩波書店 国文学研究資料館データベース 古典コレクション)12,000
*さすがに資料館の作成したもの。テキストの形式も理想に近い。値段も12,000円と、個人で買うことができる範囲。 これは勅撰集に限られているから、『新編国歌大観』さえあれば、不要と思われるかもしれないが、『新編国歌大観』では不可能な検索が、こちらでは可能だから、やはり、これも欲しい。特に、詞書の検索が自由自在にできるのがよい。 そのほか、自分でデータを追加して、自分流のデータベースを構築できる方式なのもありがたい。 著作権の問題をクリアできれば、将来的には、各研究者が作成したデータベースを持ち寄って巨大なデータベースを構築できる可能性もある。 Windowsのみ対応というのが、Mac者としては悲しい。「転びWindows」になりつつあるのは、これも大きな要因である。- 『八代集』(岩波書店 新日本古典文学大系)52,000
*冊子版の「新日本古典文学大系」をCD-ROM化したもの。 上記2つが出た以上、データベースとしては役目は終えた。 ただし、これは「新日本古典文学大系」本の脚注・付録が収められているから、それを見るためにはよい。
- 『角川古典大観 源氏物語』260,000
*源氏物語の主要な本文(校訂本文・翻刻本文[大島本・陽明文庫本・保坂本・尾州家河内本])を収録。語彙・分類・品詞別など8つの検索機能と和歌一覧などの資料を搭載。 充実した内容であることはわかるが、この価格は凄すぎる。他のCD-ROM版源氏物語と完全に一桁ちがう値段。買える人はいるんだろうか?
- 『源氏物語』(絵入り 承応版本)12,000(岩波書店 国文学研究資料館データベース 古典コレクション)
*底本に承応版本を用いる。『源氏物語大成』の位置情報や新日本古典文学大系との校異を付す。『二十一代集』のそれと同じ仕様。 - 『源氏物語』(勉誠社)9,800
*「本文研究データベース」を標榜。大島本を底本とする『源氏物語大成 校異篇』を本文とする。低価格であることと、データベースの信頼性の高さを売り物としている。 - 『歴史物語』(栄花物語・大鏡・今鏡・水鏡・増鏡)12,000(岩波書店 国文学研究資料館データベース 古典コレクション)
*いずれも近世版本を底本とする。ただし、主要な対抗本文との異同などの情報を加えてあり、研究に使用することが十分可能。『源氏物語』や『二十一代集』のそれと同じ仕様。 - 吾妻鏡〔寛永版本〕12,000(岩波書店 国文学研究資料館データベース 古典コレクション)
*『源氏物語』や『歴史物語』のそれと同じ仕様。 - 兼永本古事記・出雲国風土記抄12,000(岩波書店 国文学研究資料館データベース 古典コレクション)
*『源氏物語』や『歴史物語』のそれと同じ仕様。
- 『吾妻鏡・玉葉』(吉川弘文館)58,000
*「新訂増補 国史大系」本を底本とする。全文検索DB、人名索引DBを備える。 - 『平安遺文』70,000(東京堂出版 東京大学史料編纂所編)
* 全文検索できるのが、なんと言っても便利。個人的な希望は、ただひとつ。「早く、鎌倉遺文を出してください!」
- 『新潮文庫の100冊』(新潮社)15,450
*「羅生門・鼻」(芥川龍之介)から「月と六ペンス」(モーム)まで、新潮文庫をデジタル化。 パソコンの画面上で、本のページをめくる感覚で読めるところが特徴。語句の検索も可能。
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